2020年10月 - ビジネスブログ

オールウィン社会保険労務士事務所
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2020年10月30日 [Default]
ブログでも取り上げさせてもらっておりますが、作今重要な判決が立て続けに出ています。
今回も経営者の皆様にとって悩ましい、というかわからない定年時再雇用時の社員の給与をどこまで下げていいか・・・
という問題について注目すべき判決がありましたのでご紹介致します。

今回のケースは、愛知県の自動車学校で起こされていた名古屋地裁の判決になります。
訴えたのは自動車学校の教官の方です。
免許を持っている方ならおおよそ働き方は想像がつくと思います。
この自動車学校に勤めていた男性2名の方ですが、60歳定年後も毎年契約更新をする形で65歳まで勤務したということです。
今は原則希望者全員を65歳まで雇用しなければいけません。
定年時再雇用の一番一般的なケースだと思います。

ここで必ず問題になるのが再雇用時の賃金についてです。
当事務所もたまに再雇用時の賃金をどうすべきか問い合わせいただくことがあります。
非常にグレーなところだと考えております。
明確な線引きがないけれども、他の社員との職務内容や責任の違い、高年齢雇用継続給付や同一労働同一賃金、労働契約法などを総合的に勘案して判断しないと、大きな減額は非常にリスクが高いと思っております。
訴訟を起こした男性2名について、役職は外れたものの定年前と同様の業務を行い、責任も他の社員と同様でした。
ただ賃金については、基本給が定年前から4割から5割程度に減額され、賞与や各種手当も減額または不支給だったとのことです。
この賃金について、不当な賃下げだとして提訴したものです。

判決は注目すべき内容でした。
諸般の事情を勘案して、
「基本給と賞与が定年退職時の60%を下回るのは不合理である」
「労働者の生活保障の観点からも看過しがたく、労働契約法が禁じる労働条件の不合理な違いだ」
ということで、自動車学校に対して差額の支給を命じました。
自動車学校が控訴すれば、また高裁、最高裁で別の判断が出るかもしれません。
しかしながら非常にわかりやすく明示してくれたな、というのが個人的な感想です。

言い換えれば、定年退職前の基本給の60%が最低ラインといえます。
今後自社で定年時再雇用を行う際の一つの判断材料に間違いなくなります。
60%の判断には高年齢雇用継続給付の支給率も影響しているのではないかと考えます。
雇用保険の高年齢雇用継続給付という制度があるのをご存知でしたらおおよそ見当がつくかと思います。
60歳到達時の賃金月額と比して、定年後の賃金月額が大幅に下がった場合に雇用保険の給付を受けることができます。
60歳到達時と比して75%以上の賃金月額があれば対象外です。
しかし、61%超75%未満までは低下率に応じて給付を受けることができます。
61%以下は支給率がMAXとなっています。

ただ、今後はこの60%でも内容を精査すれば不当とすることも当然あり得ます。
60%はあくまでも最低ラインで、75%以上が本当の意味での最低ラインとも解釈できます。
やはり、定年時再雇用時の賃金についても、同一労働同一賃金の考えは避けて通れないでしょう。
しかしながら過去の判決では、一概には言えないが定年時再雇用により賃金が下がるのはやむを得ないという判決もあったと記憶しています。
60歳代はまだまだ元気ですし、今は70歳までの雇用確保に向けて国が動いている最中です。

定年時再雇用

単純に年齢だけでなく、職務内容、責任の程度等を勘案して慎重に決定していくことが重要です。
また、どうしても大幅な減額が必要なら、商務内容や責任、所定労働時間や労働日数等の労働条件の変更等で補っていくことも一つの方法と考えます。
いずれにしても個別に判断していかないと非常にリスクの高い問題であるといえます。

2020年10月21日 [Default]
国の政策目標として男性の育休取得率を今より大幅に上げることがあります。
最近は国の後押しからか、今までよりは上がってきている状況です。
でもまだまだ目標には程遠いから更なる政策を!
ということで、厚生労働省の審議会が男性の産休制度を作ろうとしているという情報がありました。
子供の出産直後にとってもらうものです。
現状の産休は産前6週間産後8週間(例外あり)が基本となっております。

子供が生まれた場合、確かに男性としても生まれたばかりのこと一緒に過ごせたら嬉しいですよね。
生まれたばかりの時は賛成できます。

男性産休

現状でも男性の育休制度は当然認められています。
取得するかしないかは本人の判断になります(義務化の話もあるようですが・・・)。
産休もそうなると思っています・・・。
義務化というのは個人的には??という感じです。

大企業はともかく、中小企業にとっては大きな問題となります。
従業員1,000人規模のうちの1名と従業員10人のうちの1名が取得するのでは全く影響が異なります。
いや10人と言わず、従業員1名の企業だったらもはや他の従業員を採用するしか道がなくなります。

最近の国の政策は、やむを得ないのかもしれませんが中小企業に大きな負担がかかるものばかりです。
政策立案段階でどこまで中小企業のことが考慮されているのか疑問に感じることが多々あります。
有識者会議等で検討するのであれば中小企業の代表者も何人か入っていてほしい。
その点、いつも確実に中小企業の現状を訴えてくれるのは日本商工会議所だと思います。
今回の男性の産休についても「慎重な検討を」と求めたとのことです。
そして「新たな制度を創設するよりも既存の制度(男性の育休等)の認知度を上げて利用を促進していくべきだ」と提言したとのこと。
まったくもって同感です!!

これは余談になりますが、男性社員が育児休業を取っても、あまり育児に参加できない、せっかく育児休業を取得したのに奥さんに家にいることを嫌がられる・・・笑、などよく聞きます。
仮に私がどこかの社員で育児休業をとったら、家にいるのを嫌がられ、怒られ、けんかをし、お互いストレスをためる・・・・
想像しただけで怖いです笑
そして予定より早く職場復帰ですね。

もちろん最近はイクメンが多いのでしょうから私のような男性は少数派なのかもしれません。

いずれにしても生まれてくるお子さんとの大切な時間は限られています。
労使ともにメリットのある制度であれば最高なのは間違いございません。
いろいろな意見を聴きながら議論していただきたいと思いました。

2020年10月16日 [Default]
10月13日に一足先に2件の正規社員と非正規社員の待遇格差に関する注目の訴訟の判決が最高裁でおりました。
ブログでも紹介しましたが、賞与・退職金について不支給としたのは不合理とまでは言えない、として実質経営側の勝訴となりました。
ただ、事例別に個々の事案で判決が変わってくる可能性も指摘しております。

立て続けに注目の待遇格差に関する訴訟の最高裁判決が昨日15日にありました。
日本郵便の契約社員の方々が起こした訴訟ですが、過去にも今後の同一労働同一賃金の目安となる判断が示されていました。
こちらも過去にブログで紹介していますが、東京・大阪・福岡で訴訟が繰り広げられていたものです。

判決第2弾

以下、簡潔に訴訟内容をお伝えします。
前提条件として、皆様契約社員ではありますが、正社員と同様の勤務をしています。
いずれも労働契約法20条に定める「不合理な格差」是正を求めております。
10項目の要望に対して、以下5項目についての判決となりました。


@ 扶養手当
⇒企業として福利厚生を充実させ、正社員の継続雇用を確保するために正社員に支給としている。
半年から1年単位で契約更新を繰り返してきた契約社員も継続的な勤務が認められる。
同様に継続して勤務が認められるのに不支給とするのは「不合理」である。

A 有給の病気休暇
⇒@とほぼ同様で待遇に差をつけるのは「不合理」

B 年末年始勤務手当
⇒年末年始に働いたことへの対価として正社員のみに支給している。
同手当は「年末年始のその時期に働いたこと自体への対価」であり、契約社員に支給しないのは「不合理」

C 祝日給
⇒祝日に勤務したことへの対価として正社員のみに支給している。
Bと同様に「祝日に働いたこと自体への対価」であり、契約社員に支給しないのは「不合理」

D 有給の夏休み・冬休み
⇒有給の夏休み・冬休みは正社員のみが該当
夏休み・冬休み(有給)は「心身の回復を図る目的」で設けられており、契約社員にだけ適用しないのは「不合理」


以上簡単に概要を記載しましたがいかがでしょうか。
私個人的には凡そ予想通りの判決でした。
ただ、日本郵便と言えば従業員数数万の大企業です。
契約社員だけ見ても過半数を占めているのでしょうか。
そうした企業と同様に考えていくのはなかなか中小企業にとっては無いことかもしれません。
また、契約社員と言えば、基本的には契約期間が定められているだけで、正社員並みの相応の仕事をしているイメージを持っています。
やはりパートやアルバイトとの待遇格差とはまた別の問題になってくるのではないかと思います。

いずれにしても注目の待遇格差についての最高裁判決が出ました。
一応同一労働同一賃金を考えるうえでのベースとして考慮していかないといけないと思います。
まだまだ判例の積み重ねがないと難しいです。
そして判決内容さえ守れば自社は問題ない、では絶対にないことは間違いございません。
一企業の一事例として考えるべきです。

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